老犬ホームとは?介護が必要なシニア犬を預かる施設の基本知識を紹介!

老犬ホームとは?介護が必要なシニア犬を預かる施設の基本知識を紹介!

ペットの高齢化が進む中、老犬の介護に悩む飼い主が増えています。愛犬との生活を大切にしながらも、介護の負担から老犬ホームという選択肢に注目が集まっています。

しかし、老犬ホームとはどのような施設なのでしょうか? その役割や特徴、利用方法、選び方のポイントなどを詳しく解説します。

目次

老犬ホームとは

老犬ホームとは、加齢に伴う健康問題や介護が必要になったシニア犬を、飼い主に代わって預かり、世話をする施設のことを指します。介護の負担から愛犬との生活が困難になった飼い主や、老犬の幸せな余生を過ごさせたいと願う飼い主のために、専門的なケアとサービスを提供しています。

老犬ホームでは、経験豊富なスタッフが老犬の健康管理と日常的な世話を行います。食事や運動、排泄のケアはもちろん、獣医師との連携により、服薬管理や医療的な処置も可能な施設もあります。

また、老犬の心身の状態に合わせて、リハビリやメンタルケアにも取り組んでいたりと飼い主との絆を大切にしながら、愛犬が穏やかで幸せな老後を過ごせるよう、きめ細やかなサポートを行うのが老犬ホームの役割です。

老犬ホームが増加している理由

近年、老犬ホームの数が増加しています。その背景には、ペットの高齢化と飼い主の事情の変化があります。ここでは、老犬ホームが増加している主な理由を説明します。

ワンちゃんの高齢化

動物医療の発達やペットフードの改良により、犬の平均寿命は以前に比べて大幅に伸びています。一般社団法人ペットフード協会の調査によると、犬の平均寿命は徐々に伸びており、2024年時点で14.9歳となっています。

犬の平均寿命の推移
一般社団法人ペットフード協会「令和6年(2024年)全国犬猫飼育実態調査」を基に筆者作成

高齢の犬は、加齢に伴う健康問題や介護のニーズが高まります。認知症や関節疾患、内臓疾患など、さまざまな病気や身体的な衰えが見られるようになるため、専門的なケアが必要になるケースが増えているのです。

実際に、一般社団法人ペットフード協会の「令和6年(2024年)全国犬猫飼育実態調査」によると、年齢別の通院回数は歳を重ねるごとに増えており、様々な問題が生じてくることが分かります。

犬の年齢別通院回数
一般社団法人ペットフード協会「令和6年(2024年)全国犬猫飼育実態調査」を基に筆者作成

こうした老犬介護のニーズの高まりが、老犬ホームの増加につながっています。

飼い主の高齢化

ペットの高齢化と同時に、飼い主自身の高齢化も進んでいます。飼い主が年老いて体力的に衰えたり、病気や入院などで愛犬の世話ができなくなったりするケースが増えています。老老介護とも呼ばれるこの状況は、老犬ホームの需要を高める要因の一つとなっています。

飼い主の高齢化に伴い、家族構成の変化や住環境の問題など、愛犬との生活を維持することが難しくなるケースもあります。子供の独立や配偶者の死去により、一人暮らしになった高齢者にとって、老犬の介護は肉体的にも精神的にも大きな負担となります。こうした事情から、老犬ホームを利用する飼い主が増えているのです。

動物愛護管理法の改正

2013年に改正された動物愛護管理法では、ペットの終生飼養義務が明記されました。この法改正により、ペットを簡単に手放すことが難しくなり、飼育が困難になった際の対応が求められるようになりました。飼い主には、愛犬の一生涯にわたって適切な世話を行う責任があるとされています。

都道府県等は、終生飼養に反する理由による引取り(動物取扱業者からの引取り、繰り返しての引取り、老齢や病気を理由とした引取り等)を拒否できるようになりました。

環境省「動物の愛護及び管理に関する法律が改正されました

動物愛護管理法の改正は、ペットを飼育する上での意識を大きく変えました。上記のように、高齢や病気で飼育が困難になった場合でも、安易に愛犬を保健所に持ち込むことはできません。

飼い主には、愛犬の幸せな余生を過ごさせる義務があるのです。こうした法的責任の明確化が、老犬ホームという選択肢に注目が集まる背景となっています。

老犬ホームのお預かりと譲受の違い

老犬ホームのサービス形態には、大きく分けて「お預かり」と「譲受」の2種類があります。それぞれの特徴や違いを理解することで、愛犬と飼い主の状況に合ったサービスを選ぶことができます。

保管業での登録の場合

保管業登録の老犬ホームでは、預かりサービスを提供しています。短期間から長期間まで、飼い主のニーズに合わせて柔軟に利用できるのが特徴です。旅行や入院、介護疲れの解消など、一時的に愛犬の世話ができない場合に適しています。

保管業での預かりサービスは、飼い主と愛犬の絆を維持しながら、介護の負担を軽減することができます。定期的な面会や、愛犬の様子を確認できるシステムがあるため、安心して利用できます。また、利用期間に応じた料金体系となっているため、飼い主の事情に合わせて柔軟に対応できるメリットがあります。

ただし、保管業での預かりサービスは、あくまでも一時的な利用を前提としているため、長期的な介護が必要な場合には向いていません。また、利用期間が長くなるほど、総費用が高くなる傾向があるため、費用面での検討も必要です。

譲受飼養での登録の場合

譲受飼養登録の老犬ホームでは、シニア犬を終生飼養するサービスを提供しています。飼い主から犬の所有権を譲り受け、老犬ホームが一生涯にわたって世話をするのが特徴です。飼い主の高齢化や健康上の理由で、愛犬との生活の継続が難しくなった場合に適しています。

譲受飼養での終生飼養サービスは、初期費用が高額になる傾向があります。ただし、犬の年齢や健康状態に応じた料金設定がされているため、トータルの費用は明確です。

一方で、万が一入居後すぐに愛犬が亡くなった場合でも、返金がない場合もあるため注意が必要です。

老犬ホームの利用プラン

老犬ホームのサービス内容や利用方法は施設によって異なります。それぞれの特徴を理解し、愛犬のニーズに合ったプランを選ぶことが大切です。

老犬ホームには、短期間の利用から終生飼養まで、さまざまな利用プランがあります。ここでは、主なプランの特徴を紹介します。

デイケアサービス

デイケアサービスは、日中だけ老犬を預かるプランです。飼い主が仕事や用事で家を空ける際に、老犬を安心して任せることができます。送迎サービスを提供している施設もあるため、利便性が高いのが特徴です。

デイケアサービスでは、老犬の健康管理や食事、排泄のケアなどが行われます。また、スタッフとの触れ合いや、他の犬との交流により、老犬の心身のリフレッシュにもつながります。介護疲れの解消や、老犬の社会性の維持に効果的なサービスといえるでしょう。

短期利用(ショートステイ)

短期利用(ショートステイ)は、数日から数週間程度、老犬を預かるプランです。飼い主の旅行や出張、入院などの際に利用されます。老犬にとって新しい環境への適応が必要になるため、事前の施設見学がおすすめです。

短期利用では、老犬の日常的なケアに加えて、服薬管理や医療的な処置も行われます。体調の変化に応じて、獣医師との連携により適切な対応が取られるため、安心して利用できます。また、定期的な面会や、愛犬の様子を確認できるシステムがある施設も多いため、飼い主との絆を維持することができます。

長期利用(終身預かり)

長期利用(終身預かり)は、老犬の余生を老犬ホームで過ごすプランです。飼い主の高齢化や健康上の理由で、愛犬との生活の継続が難しくなった場合に適しています。老犬ホームが終生にわたって介護と世話を行うため、飼い主は安心して愛犬を任せることができます。

長期利用プランは、初期費用が高額になる傾向がありますが、月々の利用料金は比較的リーズナブルです。老犬の年齢や健康状態に応じた料金設定がされているため、トータルの費用も明確です。介護の不安を解消し、愛犬の幸せな余生を見守ることができるでしょう。

老犬ホームの利用料金の相場

老犬ホームの利用料金は、施設やプランによってさまざまです。ここでは、一般的な料金の相場を紹介します。

保管業登録の老犬ホームでは、一時預かりの料金は1泊2日で5,000円〜15,000円程度が相場です。利用期間が長くなるほど、料金は割安になる傾向があります。ただし、老犬の体調や介護の内容によっては、追加料金が発生する場合もあります。

譲受飼養登録の老犬ホームでは、終生飼養の料金は一時金制が一般的です。老犬の年齢や健康状態によって料金が異なりますが、一時金は50万円〜150万円程度が相場です。ただし、高度な医療ケアが必要な場合は、別途医療費が発生することがあります。

老犬ホームの選ぶ際に確認しておきたいこと

大切な愛犬を預ける老犬ホームは、慎重に選ぶ必要があります。サービス内容や施設環境、スタッフの専門性など、確認すべきポイントは多岐にわたります。ここでは、老犬ホーム選びの際に特に注目したい点を紹介します。

動物取扱業の登録確認

老犬ホームを運営するには、動物取扱業の登録が必要です。第一種動物取扱業の登録がされているかを確認しましょう。登録内容は、ホームページや広告に明記されているはずです。登録番号や登録年月日、有効期限、動物取扱責任者の氏名などを確かめ、信頼できる施設かどうかを見極めましょう。

登録のない施設は、違法営業の可能性があります。トラブルに巻き込まれるリスクが高いため、利用は避けるべきです。また、登録があっても、基準を満たしていない施設もあるため注意が必要です。

面会・見学の可否確認

信頼できる老犬ホームでは、飼い主の面会や施設見学を歓迎しています。日常的な面会ができるか、事前予約なしで施設を見学できるかは、重要なポイントです。面会や見学を制限している施設は、不適切な飼育環境や介護体制である可能性が高いです。

面会や見学の際は、施設の雰囲気や清潔さ、スタッフの対応などを確かめましょう。老犬の表情や行動、健康状態にも注目します。愛犬が穏やかに過ごせる環境かどうか、飼い主自身の目で見極めることが大切です。

料金の適正さの確認

老犬ホームの利用料金は、サービス内容や施設環境に見合ったものであるかを確認する必要があります。一般的な相場と比較して、極端に安い料金設定の施設は要注意です。適切な介護やケアが行われていない可能性や、追加料金が発生するリスクがあります。

逆に、高額すぎる料金設定の施設も問題です。必要以上のサービスや設備に費用がかけられている可能性があります。老犬の状態に合わない過剰なケアは、ストレスを与えてしまう恐れもあります。

料金の適正さを判断するには、サービス内容の詳細を確認することが大切です。介護の頻度や内容、食事の質、医療体制などを丁寧に説明してもらい、納得できるかどうかを見極めましょう。

立地とアクセス

老犬ホームは、飼い主が通いやすい立地であることが理想的です。自宅や職場から近い場所にあれば、頻繁に面会に行くことができます。愛犬との絆を維持しながら、介護の状況を確認できるでしょう。

アクセスの良さも重要なポイントです。公共交通機関を利用して容易に行ける場所であれば、飼い主の負担を軽減できます。また、緊急時にすぐに駆けつけられることも大切です。

ただし、利便性の高さと料金はトレードオフの関係にあります。都心部の老犬ホームは、郊外の施設に比べて割高になる傾向があります。愛犬のためを思うあまり、飼い主自身の生活とのバランスを崩さないよう注意しましょう。

スタッフ体制と医療連携

老犬の介護には、豊富な経験と専門的な知識を持ったスタッフが欠かせません。介護士や動物看護師などの有資格者が在籍しているか、夜間を含めた人員体制が整っているかを確認しましょう。

また、獣医師との連携体制も重要です。提携動物病院があるか、定期的な健康チェックを行っているかを尋ねましょう。緊急時の対応方法や、医療設備の有無なども確かめておくべきポイントです。

スタッフの対応は、愛犬との信頼関係を築く上で欠かせません。見学の際は、スタッフと愛犬との関わり方を観察し、優しく丁寧に接しているかを見極めましょう。愛犬の性格や習慣を理解し、個別のケアができる体制があるかどうかも大切です。

施設の設備とサービス内容

老犬の快適な生活には、適切な設備とサービスが必要不可欠です。居住スペースの広さや清潔さ、温度管理や換気の状態など、愛犬の健康に直結する点をチェックしましょう。

運動や散歩の機会が十分にあるか、屋外スペースの有無も確認が必要です。また、遊具やおもちゃの種類、リラックスできる空間があるかどうかも大切なポイントです。

サービス面では、食事の質や量、トイレの管理方法などを尋ねましょう。グルーミングやシャンプーの頻度、肛門絞りなどの健康管理サービスの有無も確かめておくべきでしょう。

その他、機能訓練やリハビリテーションの実施状況、認知症ケアの取り組みなども、老犬の状態に合わせて確認しておきたいポイントです。

オーダーメイド対応の可否

すべての老犬が画一的なケアで満足できるわけではありません。愛犬の性格や習慣、健康状態に合わせたオーダーメイドの対応ができる施設は、より良い介護環境を提供してくれるでしょう。

例えば、食事の好みを考慮した手作り食の提供や、睡眠リズムに合わせた就寝時間の調整などです。服薬の管理方法や、医療的ケアの内容についても、柔軟に対応してもらえるかを確認しましょう。

また、飼い主との連絡方法や頻度、面会時の対応などについても、要望を伝えておくことが大切です。飼い主と施設が協力して、愛犬の幸せを実現できる体制があるかどうかを見極めましょう。

オーダーメイドの対応は、料金面での負担が大きくなることもあります。しかし、愛犬のQOL(生活の質)を維持・向上させることができれば、その価値は十分にあるでしょう。

まとめ:老犬ホームは愛犬の幸せな晩年を支える選択肢

老犬ホームは、飼い主の事情により愛犬との生活が難しくなった場合でも、愛犬との絆を維持しながら幸せな晩年を過ごすことができる施設です。

老犬ホーム選びは慎重に行う必要があり、サービス内容や料金体系、施設環境など、愛犬の性格や習慣、健康状態に合わせて最適な介護環境を見つけることが大切です。

信頼できる施設を選ぶことで、飼い主は愛犬の穏やかで幸せな姿を見守りながら、充実した日々を送ることができるでしょう。老犬の介護に悩んだら、老犬ホームの利用を検討してみてください。

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