老犬を愛する飼い主にとって、愛犬の認知症は大きな悩みの一つです。
犬の平均寿命が延びるにつれ、認知症を発症する老犬も増加傾向にあります。認知症の症状や予防法、対処法について理解を深めることで、老犬とより良い時間を過ごすことができるでしょう。
そこで、本記事では老犬の認知症について詳しく解説していきます。
犬にも起こる?認知症とは
老犬の認知症は、加齢に伴う脳の変性により、認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態を指します。
(関内どうぶつクリニック,小澤 真希子,「犬と猫の高齢性認知機能不全」)によると、11歳〜12歳の10%に、15〜16歳の35%に認知症の症状が見られたことがわかっています。
また、認知症の原因は脳内のアミロイドβタンパク質の蓄積や、神経伝達物質の減少などが関与していると考えられています。
老犬の認知症は、加齢に伴う脳の変化が主な原因であり、発症率は年齢とともに上昇します。
老犬の認知症の主な症状
老犬の認知症は、行動面や認知機能、感情面など、多岐にわたる症状を示します。ここでは、認知症における主な症状を紹介します。
行動面の変化
認知症の老犬では、これまでの習慣や行動パターンに変化が現れます。
夜鳴き・無駄吠えの増加
認知症の老犬は、夜間に鳴き続けたり、理由なく吠えたりすることが増えます。これは、昼夜のリズムが乱れたり、不安感が高まったりすることが原因と考えられます。
飼い主が熟睡している夜中に、老犬が突然吠え始めたり、鳴き続けたりする場合、認知症の可能性があります。老犬の不安や混乱を和らげるため、寝る前の散歩や穏やかな環境づくりが大切です。
夜鳴きに関してはこちらの記事で、詳しく原因や対策方法を解説しています。

旋回行動や徘徊
同じ場所をぐるぐる回り続けたり、目的もなくさまようように歩き回ったりする行動が見られます。これは、空間認識能力の低下が関係しています。
老犬が部屋の隅などでずっと同じ方向に回っていたり、いつもは行かない場所をうろついたりする場合、認知症の症状かもしれません。家の中の環境を整理し、老犬が安全に移動できるようにすることが重要です。
トイレのしつけが守れなくなる
これまでできていたトイレのしつけが守れなくなり、室内で排泄をしてしまうことがあります。認知機能の低下により、トイレの場所や目的を忘れてしまうのです。
トイレトレーニングができていた老犬が、突然室内で排泄するようになった場合、認知症の可能性を考える必要があります。老犬に優しく接しながら、トイレの場所を再確認させ、定期的にトイレに連れて行くことが大切です。
老犬がトイレに行くことが難しくなった場合は、こちらの記事で詳しく介護方法を解説します。
認知機能の低下
老犬の認知症では、記憶力や理解力、学習能力などの認知機能が低下します。
名前を呼んでも反応しない
飼い主が名前を呼んでも、反応が鈍くなったり、全く反応しなくなったりします。聴覚の衰えだけでなく、自分の名前を認識できなくなることが原因です。
老犬が自分の名前を忘れてしまったように見える場合、認知症の可能性があります。老犬に優しく話しかけ、触れ合う時間を増やすことで、絆を深めていきましょう。
これまでできていたことができなくなる
簡単なしつけや芸などをしなくなったり、指示に従えなくなったりします。新しいことを覚えるのも難しくなります。
老犬が以前はできていた芸やしつけを忘れてしまったり、新しいことを覚えるのに時間がかかるようになったりする場合、認知機能の低下が疑われます。老犬のペースに合わせ、根気強く付き合うことが大切です。
感情・性格の変化
認知症の老犬は、感情のコントロールが難しくなり、性格にも変化が現れることがあります。
感情の起伏が激しくなる
些細なことで興奮したり、逆に無反応になったりと、感情の起伏が激しくなります。環境の変化に適応しにくくなることも原因の一つです。
普段は穏やかな老犬が、突然怒ったり、興奮したりするようになる場合、認知症の影響かもしれません。老犬の感情の変化に気づき、ストレスを与えないように注意しましょう。
急に攻撃的になる
これまで温厚だった犬が、突然攻撃的になることがあります。痛みや不安、混乱などが原因で、攻撃行動に走ってしまうのです。
いつもは優しい老犬が、急に唸ったり、噛みついたりするようになった場合、認知症の可能性があります。老犬の健康状態を確認し、獣医師に相談することが大切です。
食欲や睡眠リズムの異常
認知症の老犬では、食欲や睡眠のリズムにも変化が現れます。
過剰な食欲
食べ過ぎるようになったり、何度も食事を要求したりすることがあります。満腹感が得られにくくなることが原因と考えられます。
老犬が以前よりも多くの食事を求めるようになった場合、認知症の症状かもしれません。適切な量の食事を与え、体重管理に気をつけることが重要です。
昼夜逆転の生活リズム
夜間に活発になり、昼間はよく眠るようになります。体内時計が狂ってしまうことが原因です。
老犬が夜になると落ち着かなくなり、昼間はほとんど寝ている場合、認知症の可能性があります。日中の活動量を増やし、夜は静かな環境を整えることで、生活リズムを整えていきましょう。
老犬の認知症は、様々な症状が現れます。飼い主は、老犬の行動や習慣の変化に気づくことが大切です。
老犬の認知症への対処法
認知症と診断された老犬には、適切な対処とケアが必要です。
獣医師への相談と診断
老犬に認知症の症状が見られたら、まずは獣医師に相談し、診断を受けることが大切です。認知症以外の病気が原因の場合もあるため、早期発見と治療が重要です。
獣医師は、老犬の症状や行動の変化を聞き、身体検査や血液検査、画像検査などを行います。認知症の診断には、症状の経過や他の疾患の除外が必要です。早めに獣医師に相談することで、適切な治療方針を立てることができます。
老犬の生活環境を整える工夫
認知症の老犬が安心して過ごせる環境を整えることが大切です。
一定の生活サイクルを保つ
規則正しい食事や散歩、睡眠のサイクルを維持することで、老犬の生活リズムを整えます。急な変更は避け、ゆっくりと新しいルーティンに慣れさせるようにします。
老犬にとって、一定の生活リズムを保つことは安心につながります。食事や散歩の時間を決め、できるだけ同じ時間に行うようにしましょう。変化は徐々に行い、老犬が混乱しないように配慮することが重要です。
安全で落ち着ける空間作り
老犬が安全に過ごせるよう、家の中の危険箇所にクッションを置いたり、ゲートで仕切ったりします。老犬用のベッドやクレートを用意し、安心して休めるスペースを作ります。
認知症の老犬は、ぶつかったり、落ちたりするリスクが高くなります。家具の角にクッションを取り付けたり、段差にスロープを設置したりするなど、家の中の安全対策が必要です。老犬が落ち着ける場所を作り、ストレスを軽減することも大切です。
コミュニケーションと運動の重要性
認知症の老犬とのコミュニケーションを大切にし、適度な運動を促すことも重要です。散歩やおもちゃで遊ぶ時間を設け、老犬の心身の健康維持に努めます。
老犬との触れ合いは、絆を深め、認知症の進行を遅らせる効果が期待できます。優しく話しかけ、ゆっくりと撫でてあげましょう。散歩は、老犬の運動量を確保し、刺激を与えることができます。老犬の体力に合わせ、無理のない範囲で行うことが大切です。
食事内容への配慮
認知症の老犬には、栄養バランスのとれた食事を与えることが大切です。獣医師と相談し、老犬用の療法食やサプリメントを取り入れることも検討します。
認知症の老犬は、食欲の変化や体重減少を伴うことがあります。高齢犬用の食事を与え、必要な栄養素を確保しましょう。DHA・EPAなどの脳機能をサポートする成分が配合された療法食やサプリメントを活用するのも一つの方法です。
老犬の認知症への対処には、飼い主の理解と愛情が不可欠です。老犬のペースに合わせ、寄り添うケアを心がけましょう。
老犬の認知症を予防する方法
認知症を完全に予防することは難しいですが、日頃から脳の健康に配慮することで、発症リスクを下げることができます。
頭を使う遊びやトレーニングを行う
知育玩具やパズルフィーダーを使った遊びを取り入れることで、老犬の脳を刺激し、認知機能の維持に役立てます。簡単なしつけや習得済みの芸を復習するのも効果的です。
老犬の脳を活性化するには、工夫した遊びが有効です。餌を隠したおもちゃや、知恵を使って解くパズルなどを与え、老犬に考える機会を作りましょう。慣れ親しんだしつけや芸の復習も、脳の刺激になります。老犬が楽しみながら、脳を働かせられるようにすることが大切です。
散歩コースのバリエーションを増やす
散歩のコースを変えたり、新しい場所に連れて行ったりすることで、老犬に刺激を与えます。周囲の環境や匂いの変化は、脳の活性化につながります。
いつもと違う公園や街並みを散歩することで、老犬は新しい発見をします。匂いを嗅いだり、景色を眺めたりすることは、脳への良い刺激になります。老犬の体力に合わせて、散歩コースを選ぶことが重要です。飼い主も一緒に散歩を楽しみながら、老犬の反応を見守りましょう。
コミュニケーションを多くとる
老犬とのスキンシップや会話を心がけることで、絆を深め、精神的な安定を促します。愛情深く接することは、老犬の認知症予防に欠かせません。
老犬と一緒に過ごす時間を大切にし、たくさん話しかけてあげましょう。優しく触れ合い、老犬の反応を見ながらコミュニケーションをとることが重要です。飼い主との絆は、老犬の心の支えになります。認知症予防には、身体面だけでなく、精神面のケアも欠かせません。
日頃から脳の健康を意識し、老犬に合った予防法を実践することで、認知症のリスクを減らすことができます。
まとめ
老犬の認知症は、早期発見と適切な対処が重要です。飼い主は、老犬の些細な変化にも気づけるよう、日頃から観察力を養いましょう。獣医師と連携し、老犬に合ったケアを行うことで、認知症の進行を遅らせ、穏やかな老後を過ごせるよう支えていくことが大切です。
認知症になっても、老犬は飼い主との絆を感じることができます。寄り添うケアを心がけ、愛情を注ぐことが何より大切です。老犬との幸せな時間を、最後まで大切にしていきましょう。